今週は、目立つニュースはなかった。
読書の方は、中島敦氏の「李陵・山月記」(角川文庫)を読んでいる。
学生時代に買った、旺文社文庫の同じ本が本箱のどこかに眠っている。
有名な「山月記」よりも、「悟浄出世」のほうから読み始め、今回の言葉に至った。
「悟浄出世」は、きわめて現代的なテーマを論じていることがわかった。
西遊記の3匹の弟子のうちの、河童の妖怪、悟浄の悩みを主題にしている。
引きこもりになるきっかけも、人生の悩みから来る。
昔は、引きこもりになる前に、社会に放り出され、現場で悩みから解放されるすべを先輩から学んだ。
先輩も自分と同じ悩みを抱え、どのようにそれに押しつぶされ、どのようにそれを克服したのか、先輩の後姿を見ることで知る事が出来た。
現代は、家族が暖かく悩みを受け止め、家庭に迎え入れ、独り立ちして生きる機会を奪ってしまった。
悟浄は、悩みを妖怪や仙人に相談した。
結局、社会という渦に飛び込み、そこであえぐことを始めないと、幸せはつかめないと悟る。
悩んで躊躇して、渦に飛び込まないのは、運命を自分で切り開かず、死んでいくことを意味する。
77年が経った今も、光っている短編小説だといえる。
万城目学氏が、「悟浄出世」からインスピレーションを得て、「悟浄出立」を書いた。
悟浄の物語は、今も引き継がれている。