TaoChat@972編集後記

早いもので、先週金曜日に父親がなくなって、一週間が過ぎた。

お届けする言葉がここ数回重かったので、今回の言葉は蕪村の句である。

まだ梅雨の天気が続いているが、夏の昼間の光景を詠んだ句をお届けした。

毎度説明するが、蕪村の句は、動画的な面白さがある。

視覚的な面白さだけでなく、聴覚や嗅覚を含んだ、動的な光景の再構築である。

さらに、自分がその光景に溶け込んでいるので、温かみを帯びてくる。

キャッチーなコピーでいうと、老荘桃源郷の世界といえる。

桃源郷の世界では、自然の世界の動きが、自分の無意識の世界に入り込んでくる。

蝶を見て蝶になり、魚を見て魚になり、蚊を見て蚊になる。

万物斉同の世界に溶け込む。

蕪村がそこまで没入して句を作ったか定かでないが、彼の句は、自然とその世界を表現し尽くしている。

老年になっての楽しみは、短い言葉から、自分の感性を頼りに際限のない想像の世界にいつでも飛べることである。

言葉は、目で読み、音で読み、直感で読む。