メルマガ発行後翌日の編集後記となった。
インフルエンザが流行っているらしく、昨日から家内も発熱して寝込んだ。
私も昨日は一日中だるかったが、今日は少しよくなった。
「砂の女」という小説は前から読もうと思っていたが、その機会がなく、40年ほど経って読んでみた。
読んでみると、確かに旧くて新しい小説で、人生経験を積まないと味がわからないなあと思った。60代後半になると、砂地獄の意味がわかる。
高齢者にとって、毎日が砂をかき出している労働を続けているようなもの。
労働自体に価値はなく、労働を超えたところに価値を見出す。
安部公房さんの教えがなんとなく実感される。
メルマガに取り上げた言葉の他に候補に上った言葉は、孤独に関する言葉である。
「孤独とは、幻を求めて満たされない、渇きのことなのである。」
孤独地獄では、周りの空間は亡者たちで埋め尽くされており、絶え間なく話しかけている。しかし、それに気づかず、満たされない。
亡者、即ち、祖先の霊は常にまわりを漂っているが、それとの会話をせず、今を生きる人間との会話を渇望するのが孤独となる。
高齢者の孤独死は、決して惨めなことではない。
亡者たちとの会話をしながら、亡者の生きる、あちらの世界に行く、通過点である。
さすがに、孤独の言葉はインパクトが強すぎるので、労働の言葉を選んだ。