老子の知足の言葉を取り上げました。
年末になると、この言葉を取り上げているような気がします。
原稿を書きながら、前にも同じようなことを書いたなという思いです。
年寄りはおんなじことを何回も繰り返す。
それを地で行くという開き直りです。
知足という教えは、人間には一番難しい言葉です。
なぜなら、知足を忘れなければ、貿易戦争なんて起きるはずがありません。
輸出が相手国に与える影響を考えれば、無制限に輸出することはない。
相手国の労働者の失業を考えれば、無制限に車を輸出することはできない。
足るを忘れて輸出を続けるから、輸出入のアンバランスを生じ、相手国は関税を上げて、輸出を食い止めようとする。
足るを忘れる事が資本主義の原点で、足るを知ることを教えてくれるのが、消費者の購買力である。企業は製品を作りすぎていることを知るのは、売り上げが飽和したときである。アップルがアイフォンの出荷台数を抑えるのは、売り上げの伸びが低下したためである。
安倍首相がよくWIN-WINの関係をいうが、一方的なWINを続ける事が足るを忘れるということである。自然界は、すべてが共存関係で成り立っていて、そのバランスをわきまえることが、知足である。
強国は共存関係を忘れ、おのれ一国で世界が成り立つと勘違いする。
それを老子は戒める。
何が自分にとって足ることなのか知ることは難しい。
足るを知るには、自分を知り、相手を知り、周りの状況を知り、共存関係を理解し、どうしたらその均衡を持続的に保てるか、考えなければならない。
自然界の厳しいところは、知足を忘れては生きていけないところである。
老子はこの掟を個人の人間に投げかける。
自分の命を守るのは、結局最後は自分だと。
知足の精神で、共存のバランスを自制の態度で保つことが長生きの根本だと教える。