TaoChat@940編集後記

紅葉が山から平地に降りてきている。

朝夕の空気も冷たくなっている。

秋の暮の感慨を蕪村は「限りある命のひま」と詠んだ。

こんな素敵な言葉はない。

今回の言葉は、蕪村の句である。

日の出の時刻が遅くなり、日の入りの時刻が早くなる。

空気が冷たくなると、夜空の月も冴え渡る。

秋の夜長は物思いに耽る時間が長くなる。

周りの自然も、紅葉も散り始め、樹木は冬の準備を始める。

人間だけが、命の限りを感じるひまもなく、慌しく人生を駆け抜ける。

古来の日本人は、自然の中に自分の一生を感じ取った。

四季は際限なく繰り返すが、命はその繰り返しの何回かを楽しむだけである。

その泡のような人生の寂しさを味わう「ひま」も、自然が与えてくれた恩恵である。

それを逃がす手はない。

古来の日本人は、もののあわれを自分の情感とともに文学として言葉に残した。

その情感は、日本人の普遍的な感性として未来に引き継いでいかねばならない。

蕪村の句は、その情感を味わうきっかけとなる。