編集後記は隔週に書くペースになりつつある。
今年最後のメルマガは、老子で締めくくりたいと考えていた。
81章あるうちで第何章を選ぶのか?
来年につながる言葉を選びたかった。
となると、年が開けるたびに初心に帰る姿勢が欲しい。
去年のことは忘れて、心を一度リセットして出発する姿勢である。
第40章がそれにふさわしい。
人類の歴史は振り子運動を繰り返しながら、一歩ずつ前進してきた。
老子の言葉はそれを物語る。
反とはReturnであり、原点に復帰することである。
弱とはFlexであり、水のように状況に応じて形を変え、柔軟に対応することである。
振り子運動は、全体のエネルギーを一定に維持しながら、運動エネルギーと位置エネルギーのバランスをとりながら運動を続けることである。
人類が危機に陥ったときは、それ以上に低い位置エネルギーは取り得ない。
そんなときは、知恵を結集して動き回ったので、運動エネルギーは最大になる。
人類が平和なときは、それ以上に高い位置エネルギーは取り得ない。
そんなときは、思考が散漫となり動きが鈍く、運動エネルギーは最小になる。
ベンチャー企業のときは、動きが俊敏でいろんなビジネスに挑戦していたのが、大企業になると安定志向になり、動きが鈍くなるのと似ている。
創業時の原点に戻れるだけの柔軟性をそなえた企業だけが生き残っていく。
万物の生成と消滅は、振り子運動を維持するためのエネルギーのやりとりの結果、個体レベルで起こる事象と考えられる。
晩秋に落葉するのは、夏の間に葉の光合成で蓄えたエネルギーの消費を抑えるためである。葉の役目を果たし、冬を越すために葉は自らの死をもって、来る生命の犠牲となる。新芽は葉がくれたエネルギーをもって、来る生命の土台となる。
万物の進化はこのように前向きであるが、過去の歴史を忘れない。
人間だけが寿命を延ばし、位置エネルギーをさらに高めようとする。
しかし、高めれば高めるほど、原点に戻るときのスピードは速くなる。
すなわち、文明が破綻したときの崩壊のスピードも速くなる。
核兵器による人類の破滅が一例である。
少数の人間の判断で核弾頭のボタンが押されれば、連鎖反応のように文明崩壊のスピードは加速される。放射能による環境汚染は地球規模で拡大する。
核の傘で平和が維持されると思っている限りは、平和はやってこない。
核の傘の論理は、北朝鮮の核開発の動機になっているからである。
メルマガに書けなかった思いをここで補足した。