13本の毒矢

ジェフリー・アーチャーの「13本の毒矢」を読み始めた。

アマゾン古書で求めた平成4年発行のもので、紙が茶色に変色している。

ページを開けると、プーんと鼻の先にかび臭い匂いが漂う。

電子書籍では味わえない、古書を読むというリアルな実感がある。

「ワンナイトスタンド」が面白い。

幼馴染が同じように大学を出て、同じように結婚して、同じような家庭を持ち、ニューヨークで同じ女に出会い、同じように恋に落ちる。

どちらが先に彼女を落とせるか競う。

短編ですが、次々にストーリーが展開していく。

落語のように、落ちもちゃんとある。

アーチャーは短編の天才かもしれない。

そのまえの、「昼食」も面白かった。

主人公の成功を願いつつ、ひやひやしながら、主人公の綱渡りをそばで味わう。

主人公の予想が次々と裏切られるところが、アーチャーの腕の見せ所。

これも落語と同じく落ちがすごい。

アーチャーは自分の経験を、さらにひねりを加えて、書いているようだ。

彼の人生が、政治家であり、偽証罪で服役した過去もあり、大きな波に飲み込まれながら、その苦い経験を「プリズンストーリー」として、また小説にしてしまう。彼の不屈のしぶとさとウィットとユーモアに、英国人の底力を感じる。